南部地区 地域推進リーダー
藍染なみかわ 代表 並河 善知さん(藍染作家)
工芸家の視点で森林の育成と保護
「木の命を伝えたい」
プロフィール
京都出身。昭和48年琉球藍の研究のため来沖。52年玉城に「藍染なみかわ」工房を開設。山田真山画伯の自然哲学の薫陶を受ける。平成5年タイ留学。14年横浜国大教授宮脇昭さんの講演に啓発され、以後、平成15年からイオングループの植樹などに力を入れる。
各地で緑化教室、草木染教室、どんぐりの木観察会など開催。県内外で藍染、草木染の個展多数。
平成20年国土緑化推進機構選定「森の名手・名人」。
工芸の基本は地産地消
「私の仕事は藍染ですが、一口に『藍』といってもいろいろな種類があります。
沖縄本島の藍は亜熱帯植物のキツネノマゴ科のリュウキュウアイ。宮古島のはタデ科のタデアイ。宮古上布はタデアイとキツネノマゴ科の藍をミックスして使っている。その他に八重山のマメ科のナンバンコマツナギの3種類の藍が栽培されている。
このように藍一つとっても様々で、伝統工芸はその地域の人が地域のものを生かし使って作り上げてきたものです。
継承するときも同様に、原料や技術においてその土地に伝わっているものを使うことにこだわるのが基本です」
ふるさと木の森づくりに共感
「植物も工芸と同じで、その土地のものがあるのですね。
植物生態学者の宮脇昭博士の本を読んでその考え方に共感しました。今までに国内外で森の再生に取り組んでこられた方ですが、ただ植樹すればいいというのではないとおっしゃるのです。その土地の樹木を植えよ、土地に昔からある樹木、つまりふるさと木を植えなさいと。
木を3本植えたら森、5本植えたら森林です。漢字にしたらそうでしょ。イオンが宮脇博士の考えに賛同して新しい店舗を作ると必ず駐車場に植樹をしています。また西原の南西石油のコンビナートも宮脇方式で植樹をして、本当に立派な森ができています。
私も宮脇博士の考えに感銘して植樹に協力したいと思いました。一般市民が参加しやすいということもあって、最初はイオンの植樹祭に参加しました。毎回参加するうちに顔見知りも増えて、そのうち県が行う植樹祭や育樹祭にも参加するようになり、そうするうちに県の緑化推進委員会で勉強しないかと誘われてリーダー研修会に参加し、手伝うようになりました。木について森について考えるきっかけでしたね」
台所でできる染色教室
「植樹活動を見ていると、染色屋ですから、その木で染めたくなるのですよ。今までの草木染は決まりきってモノしか使っていませんが、もしこの木で染めたらどんな色になるのだろうと思うとワクワクしてきます。できれば媒染剤も安全なものを使おうと工夫を重ねました。そうして始めたのが、私の草木染教室です。
たとえば街路樹で馴染み深いクワディーサーは、秋になると大量の葉を落として掃除が厄介とよく聞きます。ところがこれも染織の材料になります。媒染剤を石灰にすると黄茶色、ミョウバンではベージュ、鉄だとネービーブルーになるのですよ。そんな安全で楽しめる草木染教室を婦人会、自治会、子ども会で開いてきました。漫湖公園のマングローブ、南風原町の黄金森の木、浦添では公園の樹木を使おうという教室をしました。
草木染を通して参加者に木の大切さ、有効さ、もちろん楽しさをわかってもらえたらと思います」
100年後の森づくりでフクギを育てる
「木の種は命そのものです。フクギの種を植えて苗作りをしようという活動を新都心那覇市緑化センターで始めたのも、種から木を育ててみたかったからです。新都心にはフクギ並木がないのも不満でしたから。
フクギの種はすぐに発芽します。ポットで育てると3年ほどで40~50センチの苗になる。そうすれば植樹に使えるのですが、発芽してからそこまでを家庭で育てるのが大変なのですね。
残念ながらまだ植樹祭に、みなさんが育ててくれた苗を使うことができないでいますが、いつかは実現すると思っています。種から育てたフクギが並木や森になるのは、私たちの次の次の世代、孫の代になってからです。だから100年後の森作りなのです」
木は1,2年で大きくならない 木を捨てるのは命の大切さ
「木はすごいですよ。切り倒した木から、葉や皮は染織に使え、幹は家を建てたり木工の材料になります。灰も肥料になる。どこも無駄にするものはないのです。しかし1,2年で育つわけではありません。だから木を切ったら必ず植えないといけない。木のリレーをしないといけないのです。宅地開発をして住宅を建てるのだったら必ず植えて欲しいです。埋立地をするなら木を植える場所を十分に取った都市計画をするべきです。
木は命だと思います。草木染や自然観察、緑化教室など木を通して命の大切さを、特に木を受け継ぐ子どもたちに伝えられたらいいなと考えてながら仕事をしています」
藍染なみかわ
南城市玉城字冨里96-1
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